TX043 航空機用燃料電池(Fuel Cell)研究開発並び実用化実験

 今回は、航空機用燃料電池(Fuel Cell)研究開発並び実用化実験 に関する2つのニュースをお伝えします。Fuel Cellテクノロジーの、実用化、商業化が、各国で進められてきています。こうしたコンソーシアムのメンバーに、日本の企業が食い込んでいないのが残念ですね。最も、車の分野では、TATA(ランドローバー、ジャガー等のオーナー会社)とか、トヨタさんが先行していると思いますが、自動車産業の行く末を考えると、マーケットポテンシャルの高い、空間移動Vehicle ように、研究の矛先を調整できませんかね!

 各々の分野での先端開発技術を統合していく活動の重要性は今後ますます高まっていくことになります。下記に紹介する2つのプロジェクトも、そうした技術の実用化、商業化(commercialization )に向けて、多くの企業がチームワークを形成し、各種技術(コンポーネント)を統合させた総合システムとしてデザイン作業をすすめていこうとしています。近年のバトルフィールドマネージメントに不可欠のUAV(ドローン)に掲載される、諸々のテクノロジーを統合していくプロセスに酷似しています。欧米各社が、野心的研究事業会社を先頭に、どんなふうに技術の統合を図っていこうとしているのか、そして、研究開発、テスト、認可、商業化、製造、販売、サポートのプロセスのロジステックをどのように組み立てていこうとしているのか、参考にしてみてください。何十年か前に、通産省の後押しで、つくばの田舎に開設させた研究キャンパスとおなじように、アクセスのよい富士の裾野か、軽井沢あたりに、実証実験キャンパスを構築する案を、産学共同で立案してほしいですね。

1.ASL社、燃料電池を搭載したATR 72貨物機の改造をZeroAvi社と契約

(ASL signs for fuel cell-powered ATR 72 freighter conversion with ZeroAvi)

By Dominic Perry9 November 2021

 ASLアビエーション・ホールディングスは、先進的な推進装置を開発するゼロアヴィア(ZeroAvi)社と、ATR 72貨物機の水素エネルギーへの転換に関する契約を締結しました。これはASLアビエーション・ホールディングスにとって2番目の改善契約となります。

 今回の契約により、アイルランドに本社を置くASL社は、ATR 72貨物機を開発に提供し、その後、実証機として使用することになります。なお、このプロジェクトで使用する機体はまだ決まっていません。さらに、このプロジェクトが認証を得ることができれば、最終的にはASL社が保有する10機の航空機に水素燃料電池のエンジン(パワートレイン)を搭載することができるようになります。改造した貨物機による運航開始は2026年を予定しています

 ASLは10月、ユニバーサル・ハイドロジェン (Universal Hydrogen) 社との間で、ATR 72貨物機を最大10機まで改造する同様のプロジェクトに関する意向書を締結しました。ASL社は、どちらの契約も有効であるとしています。

 ユニバーサルハイドロジェン(Universal Hydrogen)とゼロアヴィア(ZeroAvia)は、航空貨物業界の技術革新とシステムの保守性を推進するイニシアチブであるASL CargoVisionフォーラムのメンバーです。フォーラムには他に、電気航空機を開発するEviation社Pipistrel社、電気モーターを製造するMagnix社Verdego社、エンジニアリング会社のFlylogix社、オートメーションのスペシャリストであるReliable Robotics社が参加しています。

 ASLアビエーション・ホールディングスの最高経営責任者であるデイヴ・アンドリューは、「ゼロアヴィア社との今回の契約は、新しい排出削減技術を現在の航空機にいち早く導入するというASLの取り組みをさらに強化するものです」と語っています。”

 シーリウム社のフリートデータによると、ASLグループの航空会社は現在、6機のATR 72(主に-200)を運用しており、サンプルとして2機が保管されている。もう1機の機体(EI-SLY)は今年3月に退役したと記載されています。これとは別に、ゼロアヴィア社は、インドのヒンドスタン・エアロノーティクス社(HAL)と、600kWのZA600パワートレインをドルニエ228ツインターボに搭載するためのレトロフィット開発契約を締結しています。これは、追加(補足)的な型式証明書によって組み込まれる予定で、合計102機のDo 228を運用しているインドの軍隊と沿岸警備隊、および世界中のその他の顧客に提供されることになります。現在、全世界で約250機が運用されています。

 HALはHindustan 228としてDo 228の製造を継続しており、将来的にはラインフィットオプションとしてZA600エンジンを追加することも検討しています。

 ゼロアヴィア社は、英国政府が支援するHyFlyer IIプログラムのもと、すでに一組のDo 228の改造を行っています。また、最近では、デハビランド・カナダ社のDash 8-400ツインターボやボンバルディア社のCRJリージョナルジェットの改造を検討する契約を結んでいます。

 次は、ドイツ、シュッツガルトの森の中に開設される7か所の実験ユニットで展開される、BALISプロジェクトの紹介です。

2.航空輸送用燃料電池開発会社、 エンプフィンゲンのBALISテストフィールドの起工式

(Fuel cells for air transport ground breaking ceremony for the BALIS test field in Empfingen)

by Staff Writers
Empfingen, Germany (SPX) Oct 28, 2021

 ドイツ航空宇宙センターは、航空機を含む様々な輸送手段のための燃料電池推進システムを開発・試験するために、ブラックフォレスト北部のエンプフィンゲン・イノベーション・キャンパスに世界的にもユニークなテストフィールドを建設しています。2021年10月6日には、政府、行政機関、産業界の代表者が出席して、新しいテストフィールドの起工式が行われました。

New generation of fuel cell systems to enable zero-emission takeoff

 DLR Institute of Engineering Thermodynamicsが主導するBALISプロジェクトでは、約1. 5メガワットの出力を持つ燃料電池システムに焦点を当てています。BALISプロジェクトでは、出力約1.5メガワットの燃料電池システムを対象としており、例えば、40~60席、航続距離1,000kmのリージョナル航空機の製造が可能になります。BALISの複雑なテストインフラ(施設)は、すべてのハードウェアと、必要となるテスト環境を含む完全なシステムをモデル化したものです。これには、燃料電池システム本体、水素タンク、電気モーター、制御・監視技術などが含まれます。このテストフィールドでは、さまざまな条件、要件、ガイドラインの下での研究開発作業が可能になります。DLRは、テストフィールドの設置・運営に加えて、BALISプロジェクトの一環として独自の燃料電池システムの開発・試験も行っています。

 ドイツ連邦運輸・デジタルインフラ省のステフェン・ビルガー政務次官は「本日の起工式は、ゼロエミッション飛行のための重要なコンポーネントの開発を可能にする、非常に革新的なテストフィールドの基礎を築くものです。これにより、BALISは非常に特別なプロジェクトであり、水素や燃料電池を使用した商業旅客航空に向けた重要な一歩となります」と説明しました。

 DLRの理事会メンバーで、イノベーション・トランスファー・リサーチインフラストラクチャ―を担当するカールステン・レマーは、「燃料電池は、ゼロエミッション飛行を実現するための重要な技術と述べ、BALISテストフィールドでは、この技術を搭載した航空機をさらに開発するための独自のインフラが構築されています」と説明しています。また、「すでに産業界からは大きな関心が寄せられており、燃料電池、電気モーター、水素タンク、パワーエレクトロニクスなどの分野で、大手航空機メーカー、新興企業、部品メーカーと接触しています」と付け加えています。

Initial research projects from 2023, and testing of complete propulsion systems from 2024/25


 テストフィールドは、Empfingen Innovation Campusの約2000平方メートルの未開発(自然環境のままの)の敷地に建設されています。このテストフィールドは、特別に設計・装備された7つの実験ユニットで構成されています。この研究インフラの契約履行は、2022年秋に開始される予定で、約9カ月を要します。

 現在の計画では、この分野のサブエリア、特に燃料電池や電気モーターに関連する分野は、早ければ2023年初頭に初期の研究開発プロジェクトの準備が整います。また、2024年から25年にかけては、推進システム全体のテストが可能になります。DLR Institute of Engineering Thermodynamics(DLR工学熱力学研究所)から少数の研究・技術サポートスタッフが常時現地に滞在し、フィールドの設置・運営を行います

 イノベーション・キャンパスは、テストフィールドを迅速に実施し、関連する研究テーマを推進するための理想的な条件を備えています。DLR工学熱力学研究所の所長であるアンドレ・テスは、テストフィールドの設置場所としてエンプフィンゲンを選んだ理由を次のように述べています。「このキャンパスは、十分なスペース、拡張可能な優れた環境内にあり、シュトゥットガルトにある研究所のメインサイトからのアクセスのしやすさも備えています。そして、DLRは、スピンオフ企業としてのmsquareを、2022年春にオープン予定の研究展望組織の一員として、すでにイノベーション・キャンパスに進出させています。

*DLA光学熱力学研究所についての情報は:DLR Institute of Engineering Thermodynamics

BALISプロジェクトについての情報は、下記をご一読ください。

BALIS 概要

 航空機用燃料電池パワートレインを1.5MWにスケールアップする為のプロジェクトです。 主要コンポーネント(燃料電池、液体水素タンク、バッテリー、電気モーター)の分析と、コンポーネントを組み合わせての地上試験を実施していきます。このプロジェクトは、ドイツ連邦運輸省(BMVI)の水素・燃料電池技術国家革新プログラム(NIP)の一環として、2600万ユーロの支援を受けています。プロジェクトは2021年1月21日に開始され、2023年7月までに終了します。

A Fuel Cell Powertrain for Aircrafts to a Power of 1.5+ MW

 航空業界における温室効果ガスの排出量削減は、非常に困難な課題であり、ほとんどが未解決です。この目標を達成するためには、燃料電池を用いたパワートレインへの移行が有望です。燃料電池は、再生可能なエネルギー源から発生した水素を、燃料電池内の酸素と反応させて発電し、排出されるのは水蒸気のみです。現在、燃料電池を搭載した旅客機は1機のみで、出力は80kW、4人乗りとなっています。しかし、40〜60人乗りで航続距離が1,000kmに達するリージョナル機となると、既存の技術を大幅にアップスケールする必要があります。

 BALISプロジェクトでは、DLRが産業界の複数のパートナーの支援を受けて、燃料電池システム、液体水素タンク、駆動ユニット、バッテリー、制御ユニット、スイッチマトリクスなどの主要コンポーネントごとにテストフィールドを構成した独自の試験施設を用いて、1.5MWの出力までのアップスケールを実証しています(図1)。スイッチマトリクスは、コンポーネントを単体で動作させるだけでなく、コンポーネントを任意に組み合わせて動作させることができます。そのため、航空機の典型的な運用時の負荷プロファイルをシミュレートして調査することが可能です。

 上のグラフに示された例は、典型的な荷重プロファイルを示しまています。まず,低速度で滑走路に移動する様子(タキシング)をシミュレートし、次に、離陸では,システムの最大出力を 10 分間使用し、そして1.2MWの電力を20分間使用して,希望の高度に到達するまで上昇させ、最終的に、この高度をさらに60分間維持させています(巡航)。

 BALISプロジェクトは、ドイツ連邦運輸省(BMVI)から2,600万ユーロの支援を受け、ドイツ・シュトゥットガルト近郊のイノベーションキャンパスEmpfingenに建設されます。DLRがコーディネートし、産業システムパートナーが制御・試験インフラを構築します。航空関連のキーコンポーネントは、複数の技術パートナーと協力してテスト施設で開発・統合されます。建設開始は2021年10月を予定しており、プロジェクト終了時の2023年7月には試験施設全体のデモンストレーションが行われる予定です。

 BALISの試験施設では、パワートレインのすべての主要部品を現実的かつ容易に試験することができます。したがって、BALISはこれらのコンポーネントのより早い開発に貢献し、燃料電池やバッテリーハイブリッド航空機の市場投入を加速することができます。

詳細情報をお望みの方は、下記のContactへお問い合わせください。

Dr. Syed Asif Ansar
German Aerospace Center
Institute of Engineering Thermodynamics, Electrochemical Energy Technology
Tel: +49 711 6862-292
Fax: +49 711 6862-747
E-Mail: Syed-Asif.Ansar@dlr.de
Dr. rer.nat. Cornelie Bänsch
German Aerospace Center
Institute of Engineering Thermodynamics, Energy System Integration
Tel: +49 711 68628325
Fax: +49 711 6862-747
E-Mail: cornelie.baensch@dlr.de
Dr. David Diarra
German Aerospace Center
Institute of Engineering Thermodynamics, Head of Institute
Tel: +49 711 6862-8296
Fax: +49 711 6862-712
E-Mail: david.diarra@dlr.de

Best regards,
Shoichi Sugiyama, Ph.D.

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