~ Loadable Software Aircraft Partsとそのセキュリティ対策 ~

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IoT、Industry4.0、Industrial Internetなど、製造業における情報産業化が進み、様々な時流を生み出すキーワードが溢れていますが、航空業界ではすでに20年近くにわたりこの分野への取り組みがなされてきました。それは、機器の不具合が乗客の命取りにつながる可能性の高い航空業界ならでは、安全・安心への高い意識による賜物と考えます。

航空機は数百万点ともいわれる多くの部品で構成されています。それらのうち重要な部品については、実績飛行時間に応じて点検や交換を行うことにより、高い水準での安全を確保しています。それら重要部品はひとつひとつが高価であり、個々の使用状態に応じた管理を行う必要から、シリアル番号に基づく個品管理の概念が早くから実践されてきました。

個品のシリアル番号を間違いなく自動識別するためAIT(Automated Identification Technology)が検討され、バーコードやRFIDの標準化・適用がいち早く行われたのもそのためです。輸送など大量の物流を捌くための活用とは異なり、部品毎に使用状態を管理し、使用履歴が重要な情報となる部品整備管理の世界は、IDを識別するためのRFIDタグ自体に履歴情報も持たせるメモリを期待したユースケースも作り上げてきました。
加えて、昨今の部品機能の高度化・複合化により、ソフトウェアを持つ部品が増加しています。そのソフトウェアを、出荷後でもダウンロード・更新可能な形態で提供される航空機部品をLSAP(Loadable Software Aircraft Parts)と呼んでいます。これこそが、いわゆる航空機IoTの要であり、航空業界が保全性や信頼性の確保に苦心してきたところです。ボーイング社のB-787やB-777などの新しい航空機ではすでにLSAPの管理態勢が確立され、AHM(Airplane Health Management)などのアプリケーションとして航空安全に大きく寄与しています。

AIT、LSAPに並ぶ3つめのキーワードとしては、現在体系化の検討が進められている「運用者個人の認証」です。米国のATA(Air Transport Association of America)ではSpec42として、ソフトウェアを持つ「もの」を取り扱う「人」が、資格や本人性も含め信頼できるかどうか十分な認証を必要とする世界標準規格を制定しようとしています。欧米の航空業界では認証・認可された人が持つ身分証明ICカードとしてPIV-AV(Personal Identification Verification – Aviation)が標準化されつつあります。

ここでは、この3つのキーワードを中心に航空機のIoTに関する取組みについて整理し、今後の進んでゆく方向を見極めるとともに、その他の業種に対してもリファレンスモデルとなることを期待します。

 

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